あらきけいすけのメモ帳

あらきけいすけの雑記帳2

非同次1階線形常微分方程式の初期値問題の解法

授業のための覚書。y, p(x), q(x)xの関数とするときの\displaystyle\frac{dy}{dx}+p(x)\,y=q(x)の解を求める。

 

大学教養程度の薄い教科書では不定積分を使うものしか見かけないのでメモ。

 

まず同次方程式\displaystyle\frac{dy}{dx}+p(x)\,y=0を変数分離法でx=0からx=tまで積分すると、\displaystyle\int_0^t\frac{1}{y}\frac{dy}{dx}dx=-\int_0^tp(x)dxである。ここで部分積分法より左辺の積分変数をyに変数変換すると\displaystyle\int_{y(0)}^{y(t)}\frac{1}{y}dy=-\int_0^tp(x)dxとなる。よって積分の結果は\displaystyle\ln|y(t)|-\ln|y(0)|=-P(t)となる(ここで\displaystyle P(t):=\int_0^tp(x)dxとする)。これより\displaystyle\left|\frac{y(t)}{y(0)}\right|=e^{-P(t)} \Longrightarrow \displaystyle\frac{y(t)}{y(0)}=\pm e^{-P(t)} だが、t=0の条件より負号は棄却され、\displaystyle{y(t)}={y(0)}e^{-P(t)} となる。*1

次に非同次の解だが、まずy(x)e^{P(x)}微分すると\displaystyle\left(y(x)e^{P(x)}\right)' \displaystyle=y'(x)e^{P(x)}+y(x)P'(x)e^{P(x)} \displaystyle=y'(x)e^{P(x)}+y(x)p(x)e^{P(x)} \displaystyle=q(x)e^{P(x)}であるから、この最左辺と最右辺をx=0からx=tまで積分すると、\displaystyle y(t)e^{P(t)}-y(0)e^{P(0)}=Q(t)となる(ここで\displaystyle Q(t):=\int_0^tq(x)e^{P(x)}dxとする)。P(0)=0に留意して整理すると、求める解は次のようになる:\displaystyle y(t)=y(0)e^{-P(t)}+e^{-P(t)}Q(t).

 

初期値問題の解のx=tでの値:\displaystyle y(t)=y(0)e^{-P(t)}+e^{-P(t)}\int_0^tq(x)e^{P(x)}dx, ただし \displaystyle P(t):=\int_0^tp(x)dx

*1:2019.4.19改稿; 旧版:y(t)y(0)から連続につながっているので、y(0)と同符号になるから、左辺は\displaystyle\ln|y(t)|-\ln|y(0)|=\ln\frac{|y(t)|}{|y(0)|}=\ln\frac{y(t)}{y(0)}となる。以上より両辺の\lnをはらって、y(t)=y(0)e^{-P(t)}となる。