あらきけいすけのメモ帳

あらきけいすけの雑記帳2

sin(x)/xの証明にx<tan(x)はいらない(高校ではなく大学教養程度なら)

授業のための覚書

高校レベルだと公式:\displaystyle \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1の証明は不等式 \sin x < x < \tan x を出発点にしている。

ここで右側,  x < \tan x は、「面積」で評価すると円の面積の評価に\displaystyle \lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1を使っているので循環論証となり、「弧長」で評価すると曲線の長さのRiemann積分を基礎とした不等式評価になるので、いずれも高校数学の範囲を超えてしまう。

どうせ超えるのなら、円周の長さをRiemann積分*1で評価する方が早い。円周の長さが2\pi Rであることは、\piの定義より所与とする。

以下 N=3\times2^k where k=1,2,3,... とする。まず半径 R の円に内接する正 N 角形の周長\displaystyle l_N := 2 N R \sin\frac{\pi}{N}  N の単調増加列である。(\displaystyle \because 2NR\sin\frac{\pi}{N} \displaystyle  = 4NR\sin\frac{\pi}{2N}\cos\frac{\pi}{2N} \displaystyle  < 4NR\sin\frac{\pi}{2N}. )2点を結ぶ最短距離は線分だから、円周より内接正 N 角形の周長が短い: l_N < 2 \pi R .だから単調収束定理*2より\displaystyle \lim_{N\to\infty}l_N は収束する。有界単調性だけでは極限が 2 \pi R とはまだ言えない。

内接する正 N 角形は領域\displaystyle T:=\left\{r: r \in \left[R\cos\frac{\pi}{N}, R\right] \right\} にいる。 N\to\infty で領域 T が半径 R の円に収束するので、周長の極限値\displaystyle \lim_{N\to\infty} 2 N R \sin\frac{\pi}{N} \displaystyle  = 2 \pi R \lim_{N\to\infty}\cos\frac{\pi}{N} \displaystyle  = 2 \pi R. 後半部分だけでは「極限値があるとすれば 2\pi R が唯一の候補」までしか言えない。

以上より\displaystyle \lim_{N\to\infty} 2 N R \sin\frac{\pi}{N} = 2 \pi R  \Longrightarrow \displaystyle \lim_{x\to0} \frac{ \sin x }{ x } = 1 where  \displaystyle x= \frac{\pi}{N}.